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怒隊
 

 地下の射撃訓練場に、断続的に銃声がとどろく。
 レオナは両手で構えていた大型の拳銃を下ろし、カートリッジを引き抜いた。
 その隣のブースでは、ショートカットの少女が同じように射撃の練習をしている。手にしている銃は、レオナが使っているガバメントよりもさらに巨大なデザートイーグル──本来なら、少女が構えるだけでもひと苦労するはずの代物だった。
 それを少女は、堂に入った動きで的に狙いを定め、ほとんど銃口をぶれさせることなく次に引鉄を引いていく。

在地下射擊訓練場中,斷斷續續傳來幾聲槍響。
蕾歐娜放下手中的大型手槍,將彈匣卸了下來。

而在其相鄰隔間,短髮少女同樣正進行著射擊練習。其手中所持的槍,是比蕾歐娜所使用的戈巴曼來得更加大把的沙漠之鷹──一般而言,對少女來講應該是件連擺出架勢都很困難的事物才是。
 然而少女卻是動作嫻熟地瞄準目標,槍口幾乎沒有絲毫晃動地接連扣擊著扳機。

 

 弾丸を撃ち尽くした少女は、イヤーマフをはずしてレオナを見やった。
「グルーピングが悪いのは銃のせい? それともあなたの集中力が欠けているせい?」
…………
 少女──ウィップの問いに答えることなく、レオナは遠くに置かれた的を見つめた。
自分が撃った的とウィップが撃った的、ふたつを見くらべてみれば、どちらの腕が上かははっきりと判る。それは単なる技量の差であって、銃や集中力の差ではない──と、レオナはそう思った。
 レオナは使い慣れたガバメントにあらたに弾を込め、低い声で呟いた。
……あなた、わたしを監視しているの?」
「される覚えがあるの?」

子彈射盡後,少女取下耳罩望向蕾歐娜。
「打靶結果不盡理想是因為槍的問題呢? 還是說是欠缺集中力的關係呢?」
…………
 對少女──Whip的提問閉而不答,蕾歐娜凝視著置於遠方的靶子。
 自己的射擊與Whip的一相比較,水準的優劣一目瞭然。完全就是技術上的差別,而不是槍或集中力的緣故──蕾歐娜內心是這麼想的。
 蕾歐娜將慣用的戈巴曼重新裝填上子彈,低聲嘆息著。
……妳,是來監視我的嗎?」
「妳覺得被監視了嗎?」

 

……前科はあるわ」
 かつてレオナは、遥けし彼の地より出づる者によって開催されたキング・オブ・ファイターズに参戦した際、血の暴走を起こしたことがある。前回の大会にレオナが参戦せず、代わりにウィップがラルフやクラークとともに参戦したのは、任務の最中にレオナがふたたび暴走する可能性が危険視されたからだった。
「あなた、今度の大会にはどうしても出場したいって上申したそうね? 何か理由があるの?」
…………
 レオナは口を閉ざし、それ以上のウィップからの質問をさえぎるかのようにイヤーマフをつけ直した。

……因為有著前科啊。」

之前蕾歐娜,在參加由"來自遙遠彼岸之人"所舉辦的拳皇大賽之際,曾經發生過“血之暴走”的情形。於是上屆大會中蕾歐娜就沒有參賽,改由Whip與拉爾夫及克拉克共同組隊參戰。因為被認為蕾歐娜有高度可能性會在任務途中再一次地暴走。
「妳為何向上級報告說這次大賽無論如何也想要出賽呢? 其中有什麼理由嗎?」
………
 蕾歐娜緊閉雙唇,像是要迴避Whip的詢問似地重新戴上耳罩。

 

◆◇◆◇◆

 

 隻眼の傭兵の前に立ったラルフ・ジョーンズとクラーク・スティルは、そっと視線を交わして上官の言葉を待った。
 部下たちに背を向け、無言で書類をめくっていたハイデルンは、やがて小さな溜息とともに椅子を回転させた。
……レオナから、今回の作戦へ加えてくれとの要望があった」
「へえ、あいつのほうから? そいつは珍しいこともあるもんですね」
「ということは、今回の大会は、大佐と俺、それにレオナの3人で参戦というわけですか?」
「いや」

站在獨眼傭兵之前的拉爾夫.瓊斯和克拉克.史迪爾,相互交換了神色,等待長官開口說話。
 背向部下們,一言不發地翻閱著文件的海迪倫,不一會輕聲嘆了口氣後隨著椅子轉過身來。
……蕾歐娜要求,希望這次的作戰能讓她加入。」
「嘿、那傢伙自己開口要求的? 那還真是件挺稀罕的事呢。」
「意思就是說,這次的大會,由大佐和我,再加上蕾歐娜3人去參戰的意思嗎?」
「不。」

 

 ハイデルンはマホガニーのデスクの上に書類を放り出し、ラルフたちを見上げた。
「その判断を下す前に、おまえたちの意見を聞きたい。前回の大会終了直後にレオナが暴走したという事実を踏まえた上で──今回の作戦、レオナの参加を許可すべきだと思うか?」
 そう尋ねられたラルフは、にやりと口もとを吊り上げて笑った。
「どうしてそんなことをわざわざ聞くんです? あいつだけじゃない、俺たちだって、教官が行けといやァどんなところにだって行きますよ。レオナと組めといわれりゃ組みますし、ムチ子を連れてけといわれりゃ連れてきます。何も俺たちの意見を聞く必要はないんじゃないですかね?」

海迪倫將文件擺到紅木製的桌上,抬頭望著拉爾夫二人。
「在做出決定之前,我想先聽聽你們兩個的意見。以蕾歐娜在上上次大會結束時再度發生暴走這件事為前提──這次的作戰,你們認為應該要允許蕾歐娜參加嗎?」
 被如此詢問的拉爾夫咧嘴笑了。
「這種事有必要特意問我們嗎?不只那傢伙,我們也都是一樣,不論要我們去什麼地方,只要教官一聲令下,我們都會照辦的。要我們和蕾歐娜組隊我們就跟她組隊,叫我們跟鞭子一起我們就跟鞭子一起。實在是沒有徵詢我們意見的必要吧?」

 

 どこかからかうようなラルフの回答に、それまで眉間にしわを寄せていたハイデルンが、ふと小さく苦笑した。
……真っ先に危険にさらされるのはおまえたちだ。現場に立つ人間の意見は尊重すべきだろう」
「レオナの暴走の原因は、おそらく、封印を解かれたとかいうオロチの影響でしょう。だとすれば、どこにいたって影響を受けるんじゃありませんか?」
 クラークが淡と私見を述べると、ラルフも大仰にうなずき、
「そうそう。……だいたい、いっしょにいる俺たちのことを案じてくれるってんなら、そもそもオロチとの最後の戦いの時に案じるべきだったんじゃないんですか、教官どの?」

對拉爾夫那半戲謔式的答覆,始終眉頭緊蹙的海迪倫,也不禁露出一絲苦笑。
「在最前線的可是你們,應該要尊重一下第一線人員的意見才是吧。」
「蕾歐娜會暴走的原因,恐怕是出於大蛇封印解開所造成的影響吧。這麼一來,不論她身在何處不都是會受其影響嗎?」
 克拉克淡然地陳述自己的見解,拉爾夫也不住點頭。
「沒錯沒錯。……說起來,倘若是要擔心她和我們在一起這件事,不就跟當年和大蛇最後一役當時所擔心的事情一模一樣了嗎,教官閣下?」

 

 無精髭の生えた顎を撫で、ラルフは拳を握り締めた。
──まぁ、もしまたあいつがこの前みたいに暴れ出すようなら、ブン殴ってでも正気に戻してやりますよ」
「大佐もこういっていることですし、俺たちのことならどうかご心配なく。……丸腰でゲリラが待ち受けているジャングルに放り込まれることを思えば、KOFは天国みたいなもんですから」
「ああ。少なくとも大会期間中はホテルのいいベッドの上で寝られるし、コンバットレーションともおさらばできるしな」

手撫著長滿鬍渣的下顎,拉爾夫握緊了拳頭。
──總之,若是那傢伙又跟之前一樣發狂了的話,我會狠狠地揍她一拳讓她清醒過來的。」
「大佐都這麼說了,關於我們的事情就無需多掛心了。……與赤手空拳在叢林裡進行游擊戰相比,KOF簡直就跟天堂沒兩樣呢。」
「對啊。好歹在參加大會期間還能在旅館的床上好好睡上一覺,也能告別吃戰鬥口糧的日子了。

 

……どうやらおまえたちには愚問だったようだな」
 ハイデルンは静かに目を伏せて立ち上がった。
「バーンシュタイン家が建設中の大会決勝戦用のドームスタジアムから南方50キロに位置する海上に艦隊を展開し、そこに指令本部を置いて私が作戦の指揮を執る」
「了解です。──しかし教官」
「何だ、クラーク?」

……看來是問了你們一個蠢問題呢。」
海迪倫闔上眼睛站起身來。

「在距龐休泰恩家興建中的大會決勝戰用圓型競技場南方50公里處的海面部署艦隊,將在那裡設置指揮中心,由我出任作戰總指揮。」

「了解。──不過教官。」

「怎麼了,克拉克?」

 

「そのバーンシュタイン家のご令嬢、ルガールの娘ですが、いったい何が狙いでKOFなんか開催する気になったんでしょう? バーンシュタイン家のメンツ……とも思えませんが」
「それはまだ判らん。……だが、あの連中が裏で糸を引いているという可能性もある。いずれにしろ、各人、油断をするな」
「はっ!」
 ラルフとクラークは、ハイデルンに最敬礼してそのオフィスをあとにした。

「那位龐休泰恩家的千金、路卡爾的女兒,到底是為了什麼目的要舉辦KOF的呢?若說是為了龐休泰恩家的名聲我並不這麼認為。」
「這件事還不清楚。……不過,很有可能是那個集團在其中穿針引線。總之,每個人,絕不可疏忽大意。」
「是!」
 拉爾夫與克拉克,向海迪倫行最敬禮後,離開了辦公室。

 

◆◇◆◇◆

 

──よう、お嬢さんがた」
 ウィップとレオナがそろって数十発の弾丸を消費した頃、地下射撃訓練場に、やたらと声の大きな上官が姿を現した。
「ふたり揃って射撃の訓練か。感心感心」
 折り目正しく敬礼していたウィップは、ラルフではなくクラークに向かって尋ねた。

──唷,小妞們。」
 
 正當Whip與蕾歐娜正消耗著數十發彈藥的時候,大嗓門長官的身姿出現在地下射擊場中。
「兩個人都在進行射擊訓練嗎。佩服佩服。」
 對目不斜視敬禮中的Whip,不是拉爾夫、而是由克拉克開口説道。

 

「中尉、今回の作戦の件ですが──
「ムチ子、おめーはバックアップだ」
 ウィップの問いを途中でさえぎり、ラルフは悪戯っぽい笑みを浮かべていい放った。
「今夜にも正式な通達があるだろうが、今度の大会は、俺とクラーク、それにレオナの3人でエントリーすることになった」
 それを聞いたウィップが大袈裟に肩をすくめる。

「中尉,關於這次的作戰任務──
「鞭子,妳這次是做後勤支援了。」
 Whip話還沒問完,拉爾夫就露出戲謔般地笑容回答道。
「今晚正式的通知就會下來吧,這次的大會,就由我和克拉克,以及蕾歐娜三人組隊參賽了。
 話聽完後,Whip誇張地聳了聳肩。

 

──最初からこうなるんじゃないかって気はしてましたけど」
「へへっ、おめぇはアレだ、あの年中反抗期の坊主どもをどうやって引っ張り込むか、そいつを考えとくんだな。あんな不良少年でも、いざってェ時の頭数には数えられるからな」
「彼らを参戦させるのは、今回はわたしの任務じゃありませんよ」
 ぷいっとそっぽを向いたウィップの隣で、レオナが静かに敬礼をした。
……ありがとうございます」
「礼なら教官にいうんだな。俺たちはただ、誰がチームメイトでも全力を尽くすといっただけだ」

──我一開始就覺得事情應該會變成這樣了。」
「嘿嘿,我想妳應該是因為那個的緣故吧,該如何讓那群正處於叛逆期的小鬼頭們過來幫忙,教官也有這方面的考量吧。即使面對那群不良少年,相信妳還是有本事讓他們變得服服貼貼的吧。」
「這次讓他們參賽並不是我負責的任務。」
Whip
將頭甩到一邊,身旁的蕾歐娜仍維持著敬禮的姿勢。
……非常感謝。」
「要道謝的話去向教官說吧。我們只是說了,不管跟誰組隊都會全力以赴罷了。

 

「ま、安心しろよ。もしおまえがこの前と同じようなポカをやらかしたとしても、その時は俺が責任を持って正気に戻してやっから」
 小さな岩のような拳を誇示し、ラルフがにやりと笑う。それを見たウィップが、冷ややかな口調で釘を刺した。
「たとえそんな事態になったとしても、間違ってもレオナを殴り殺したりしないでくださいね。大佐は手加減てものができそうにないタイプですし──
「あァ!? てめェ、ナニいってんだ? 人をまるで不器用な人間みてェにいいやがって──!」
「そのいいようだと、まるで大佐が器用な人間みたいじゃないですか。そいつは俺も初耳ですね」

「總之,放心吧。即使妳和之前那樣抓狂,到時候我們也會負起責任讓妳回復神智的。」
 誇示著如小岩石般的拳頭,拉爾夫露出會心的笑容。在一旁看著的Whip,用冷冷的語氣叮囑道。
「假若事態真發展到那個地步,請注意不要錯手把蕾歐娜給殺了喔。大佐是屬於那種不知出手輕重的類型呢──
「啊!? 妳這傢伙,說這什麼話啊? 把別人講得那樣笨手笨腳的──!」
「話說得這麼好聽,講得好像大佐是個手巧的人一樣啊。那種事我還是第一次聽說呢。」

 

「クラーク! てめェまで何いいやがる!?
 射撃訓練場に、ラルフの怒声とクラークの笑い声が響き渡る。
 大きな作戦を目前にしているというのに、彼らには気負いというものがまったくない。レオナが幼い頃から硝煙の臭いの中に身を置いていた彼らが──そこがどんな戦場であろうと──特に身構えておもむくというようなことはないのだろう。
 青い髪を揺らし、レオナはほんの少し、口もとをゆるめた。
──おいレオナ」
 レオナの些細な表情の変化に目ざとく気づいたラルフが、ぎろりとレオナを睨みつけた。

「克拉克! 好歹你也幫我說說話啊!?」

在射擊訓練場中,迴盪著拉爾夫的怒吼與克拉克的笑聲。
即使這樣大的作戰就近在咫尺,但他們來說就像全無壓力似的。對這群從蕾歐娜小時候起,就總身處在硝煙味中的傢夥們而言──
不管前方是怎樣的戰場──都會面不改色地前往吧。
 藍髮飄曳著,蕾歐娜的嘴角微微地失守了。
──喂蕾歐娜。」
 察覺到蕾歐娜表情上的細微變化,拉爾夫露出不可置信的表情瞪著蕾歐娜。

 

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「おまえ、今笑いやがったな!?
「はい」
「こ、こいつ、いけしゃあしゃあと──
「たまには笑えと、大佐から命じられていますので」
「むっ……!」
 レオナのもっともな答えにラルフは返す言葉を失い、クラークとウィップは揃って噴き出した。

「妳、剛剛是不是笑了!?」
「是的。」
「連、連妳這不苟言笑的傢伙也──
「因為偶爾要露出笑容,是大佐向我下的命令。」
「唔……!」
對蕾歐娜這番巧妙的回答,拉爾夫完全無言以對,
克拉克和Whip不禁噗嗤地笑出聲來。

 

 この戦いの行き着くところに待ち受けているものが何なのか、それはレオナにも判らない。何かは判らないが、とにかく恐ろしい敵であることに間違いはないだろう。
 しかし、本当の意味でレオナが向き合わなければならない敵は、激闘の先に現れる何かではなく、激闘の中でレオナにささやきかけてくるもうひとりの自分──おのれの心の中に棲む呪わしいであった。

蕾歐娜自己也不清楚,這場戰鬥最終會有什麼在等待著他們。即使什麼都不知道,有著恐怖的敵人這點是確鑿無疑的。

然而蕾歐娜真正所要面對的敵人,不是激鬥前所出現的任何東西,而是在激鬥當中,在蕾歐娜耳邊竊竊私語的另一個自己──在她內心棲息著的,那受詛咒的“血”。

 

 それは、一度は克服したはずの内なる敵だった。二度倒しても二度復活するという可能性も否定はできない。あるいは、レオナが生きているかぎり、何度でも戦わなければならない相手なのかもしれない。
 だが、レオナにその戦いを回避するという選択肢はなかった。だからこそ、今回の作戦にもみずから名乗りをあげたのである。

那,應該是已經克服過一次的內在敵人。也不能否定有著就算再次打倒,仍會再次復活的可能性。或者該說,那是在蕾歐娜的有生之年,將窮極一生與之戰鬥的對手也說不定。
 然而蕾歐娜並沒有選擇的餘地。正因為如此,這次的作戰才會主動要求參加。

 

 敵は強大である。
 それでも、決して負けはしない。
 レオナにそう思わせてくれるのは、おそらく、このタフな戦友たちの存在があるからだろう。
 そして、レオナがほんの少しだけ笑えるようになったのも、彼らのおかげだった。

敵人非常強大。
就算是這樣,也決不會輸。
能讓蕾歐娜這樣子認為,恐怕,是因為身邊有著一群頑強的戰友們在吧。
而且,能讓蕾歐娜稍稍展露笑靨,也是多虧了有他們在。

 


─ 
END  
 

 


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