Ash Crimson─上篇
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重苦しい雲に覆われた低い空を飛び去っていく航空機のエンジン音が、束の間、ふたりの会話をさえぎった。
遠ざかっていく機影を見送る二階堂紅丸の足元には大きなバッグが置かれている。対して、デュオロンは身ひとつの手ぶらだった。
神出鬼没のこの男なら、妙に納得がいく。基本、この男は自分とは異なる世界の住人なのだと、紅丸はそう考えていた。
「──入院?」
エンジン音に邪魔された先ほどの問いを、デュオロンが繰り返した。
「草薙京が?」
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兩個人之間的對話,被沒入灰濛雲端的飛機引擎聲所掩蓋。
目送機影遠去的二階堂紅丸,腳邊放著個大包包,相對地,墮瓏則是兩手空空。
若用神出鬼沒來形容這個男子,實在再適合不過了。
「──住院?」
因為引擎噪音的關係,墮瓏復又問了一遍。
「草薙京嗎?」
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「といっても検査入院だよ。──重いか軽いかでいえば、八神を止めようとしてボコボコにされた真吾のほうがよっぽど重症だ。全身の骨折だけでも、ひと月やふた月じゃ治らないだろうさ」
それでも、命があっただけましかもしれない。“血”の暴走を起こした八神庵と相対して、その程度の怪我ですんだのなら、それはむしろ僥倖というべきだろう。
ロングコートのポケットに手を突っ込んだまま、紅丸から少し離れた位置に立ち尽くしていたデュオロンは、静かに瞳を伏せて嘆息した。
「……それでおまえも帰国か」
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「說是因為要檢查而入院。──要說嚴不嚴重,比為了想要阻止八神而搞得傷痕累累的真吾還來得更為嚴重些。雖然只是全身骨折而已,不過不花上一兩個月的時間無法痊癒吧。」
即使如此,還能保住一條小命就已經很不錯了吧。對上了因“血”之暴走而覺醒的八神庵,只受到這種程度的傷害,已經算是萬幸了吧。
將手插進大衣口袋,始終站在紅丸邊的墮瓏靜靜地閉上眼睛,嘆了口氣。
「……你也要回國了嗎?」
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「ま、ひとまずな。……このまま引き下がるあいつじゃない。ってことは、あいつがチームを組もうって相手はほかにはいないだろ?」
「そういうものか」
「そういうもんだよ」
大きくうなずいた紅丸は、ふと笑みを納めて続けた。
「──おまえ、あの男をさがしてるんだろ?」
「あの男とは?」
「とぼけるなよ。俺はあの男と会ったことがあるんだぜ?」
「……そうだったな」
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「嗯、首先嘛。……不先追到那傢夥不行呢。話說回來,想和那傢夥組隊的傢伙,應該已經沒有了吧?」
「是這樣嗎?」
「就是這樣啊。」
點頭表示贊同的紅丸,忍不住笑了出來。
「──你啊、不是正在追那個男的嗎?」
「那個男人是指?」
「少裝了。我也曾碰到那個人喔?」
「……這樣啊。」
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飛賊と呼ばれる暗殺者集団の一員であるデュオロンは、一族を裏切って出奔したみずからの父親──ロンを捜し続けている。本来なら表舞台に姿を現すことのないはずのデュオロンが、“ザ・キング・オブ・ファイターズ”にたびたび出場しているのも、おそらくロンの行方を捜すためなのだろう。
風になびく金髪をかき上げ、紅丸はいった。
「もしまたどこかであの男の噂を耳にしたら、おまえに知らせてやるよ」
「すまない、二階堂。世話をかける」
「別に礼なんかいらないさ。──その代わり、あの小僧を見つけたら俺にも教えてくれ」
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身為被稱作飛賊的暗殺集團一員的墮瓏,仍持續搜索著背叛族人,獨自逃走的父親──龍。也許就是因為這樣的緣故,原本絕不可能在公開場合現身的墮瓏,才會多次出場參加拳皇大賽吧。
金髮隨風飄揚,紅丸說道。
「假如有得到那個人的情報的話,我會通知你的。」
「不好意思,二階堂。受你關照了。」
「沒必要向我道謝。──相對的,如果你找到那小子的話也通知我一聲。」
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デュオロンはしばし無言で紅丸を見やった。
「……おまえとアッシュの間にどんな因縁がある?」
「俺にはないが、あいつにはあるだろうさ。──結局、みんなアッシュにハメられてたってことだろ?」
「また草薙の世話か……まるで保護者だな」
「よせよ」
ふたたび苦笑に表情を崩した紅丸は、腕時計を一瞥してフェンスから背を浮かせた。
「……そろそろ搭乗時間だ」
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墮瓏無語地盯著紅丸。
「…你跟Ash之間有什麼因緣嗎?」
「雖然我沒有、不過那傢伙倒是有吶。──也就是、大家被Ash搶奪的事啦。」
「還要照顧草薙嗎…完全就像監護人一樣啊。」
「別鬧了。」
無奈苦笑的紅丸瞥了一眼手錶,背部離開了圍欄。
「…差不多是登機時間了。」
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「息災でな」
バッグを肩にかけて歩き出した紅丸に、デュオロンが淡々と言葉を投げかけた。これから旅に出る知己を見送るのにふさわしからぬ、冷淡で素っ気ないひと言だった。
紅丸は肩越しにデュオロンを振り返った。
「──案外、すぐにまた顔を合わせることになるかもしれないぜ?」
「だとしても、その時はもう同じチームではない」
「……だろうな」
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「一路順風。」
墮瓏朝揹著包包離開的紅丸,用不像是要送別一同旅行熟人的冷淡語氣,淡淡的說道。
紅丸背對著揮了揮了。
「──說不定意外地,會很快再碰面呢。」
「即使這樣,到時應該也不在同一隊了吧。」
「……也是呢。」
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また1機、巨大なジェット機が滑走路に向かって舞い降りてくる。逆巻く風がふたりの長い髪を乱し、またもや彼らの会話を途切れさせた。
強い風から顔をそむけた紅丸が、あらためてデュオロンに声をかけようとした時、さっきまでそこにあったはずの黒い長身の影は、すでにいずこかへと消えていた。
「……らしいといえばらしい、か」
小さく鼻を鳴らし、紅丸はバッグを揺すり上げた。
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又一架巨大的噴射機降落在跑道上。刮起的強風吹亂了兩人的長髮,也結束了兩人間的對話。
在臉背向著強風的紅丸想與墮瓏說再會時,原本一直在那兒的黑色細長身影,不知何時已經不見蹤影了。
「……說像的話還真像啊。」
從鼻子輕哼了一聲,紅丸輕搖著提起了包包。
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このあたりの地価がどのくらいかということは、あいにくと門外漢の紅丸にはよく判らない。ただ、決して安くないだろうということは想像がつく。
そういう場所に、これだけの広い屋敷を構えていられるということは、財力はもとより、それとはまた別の、隠然たる力が必要だろう。
そして、今は神楽家と名乗っているこの古い一族には、実際にそうした力があるらしかった。
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這附近一帶的地價到底值多少,像紅丸這樣的門外漢是完全不了解的。不過可以肯定的是絕對比想像中還要高檔。
在這樣的地方卻只蓋了棟寬敞的房子,比起財力雄厚,似乎更是為了要隱藏其所擁有的力量。
而且,這個如今被稱做神樂家的古老一族,確實是擁有這樣的實力的。
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広い庭の池のほとりにしゃがみ込み、ぼんやりと大きな鯉たちが泳ぐさまを眺めていた紅丸は、かすかな絹鳴りの音を聞きつけて振り返った。
「──いつ日本に?」
そう問うたのは、藤色の浴衣をまとった黒髪の和風美人──神楽ちづるだった。
「つい数時間前さ」
「フットワークが軽くてうらやましいわ」
少しさびしげに微笑んだちづるは、庭に面した座敷の縁側に、浴衣の裾を綺麗にさばいて座った。
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蹲在寬敞庭院的水池邊,正茫然的盯著池中悠遊的大鯉魚的紅丸,聽見了絲布摩擦的輕微響聲而回過頭來。
「──何時回到日本的?」
詢問的,是穿著淡紫色浴衣、有著一頭黑髮的和風美女──神樂千鶴。
「差不多幾個小時前吧。」
「真羨慕你能毫不費勁的往來呀。」
臉上帶著一絲落寞,千鶴微笑著說道。邊在面對著庭院的坐墊旁,將浴衣下擺折好後坐了下來。
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今年の日本の夏はいつもより蒸し暑く感じる。しかし、ちづるの顔色がさえないのは、絡みつくような暑さに辟易しているからではないのだろう。
冷たい宇治茶を運んできた家人が下がるのを待って、紅丸は単刀直入に尋ねた。
「具合のほうは相変わらずなのかい、ちづるさん?」
「ええ。身体のほうはどうにかもとにもどったけれど、“力”のほうは──」
「そうか……」
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今年日本的夏天比往年來得更加酷熱。然而千鶴的氣色卻十分差,應該與這暑氣沒有關聯吧。
在端上冰宇治茶的家人退下後,紅丸單刀直入地詢問了。
「身子的狀況還是一樣沒變嗎,千鶴小姐?」
「是啊。雖然身體上的傷都痊癒了,但是“力量”的話就──」
「這樣啊……」
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「そういえば、肝心なことを忘れていたわ。優勝おめでとう、二階堂さん」
「よしてくれよ。対戦相手が途中で“失踪”しちまった上での不戦勝だぜ? 人さまに胸を張って報告できるような結果じゃあない」
縁台に腰を降ろし、冷茶のグラスをあおる。冷たい渋みが紅丸の喉の奥をすべり落ち、ほのかな甘みとなって口の中に広がっていった。
確かにこの心持ちは、栄えある優勝者のそれとはほど遠い。むしろ紅丸は、敗者にもひとしい口惜しさをかかえて日本に帰国してきたのだった。
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「這麼說來,忘了還有更要緊的事。恭喜你獲得了優勝,二階堂先生。」
「別說了。恭喜我因為對手中途"失蹤"所取得的不戰之勝嗎?這可不是個能讓我得意得拿來說嘴的結果啊。」
坐到長椅上,將冷茶給一飲而盡。冷冽的苦味順著喉嚨而下,微微的甘甜在口中擴散開來。
確實現在的心情、完全不像是個充滿榮耀的優勝者。應該說,紅丸是抱著如同失敗者般遺憾的心情回到日本來的。
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神楽家の現当主である神楽ちづると、草薙流の継承者たる草薙京、そして八神流の八神庵──。
彼ら3人は、すでに神話と化した遠い昔、増長した人類を粛清しようとした地球意思“オロチ”と戦い、これを封じた“三種の神器”の末裔である。
現代に復活しようとしたオロチを、激闘の末にふたたび封じることに成功した3人は、しかし、前々回の“ザ・キング・オブ・ファイターズ”において、そのオロチに比肩しうるかもしれない強大な敵と遭遇した。
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神樂家的現任當家神樂千鶴、草薙流的繼承者草薙京、以及八神流的八神庵──。
他們三個人,是與遠古神話時代想肅清過量人口的地球意志“大蛇”戰鬥,並將之封印的"三種神器"的後裔。
三人在早前,與想在現代復活的大蛇經過一番激戰之後,成功地將它再次封印;然而在前回的拳皇大賽中,遇上了力量能與大蛇比肩的強敵。
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“遥けし彼の地より出づる者”──。
彼らはみずからをそう呼んだ。人類によく似た姿を持ち、しかし、人類とは決定的に異なる異種族。彼らのいう“彼の地”がどこを意味しているのかは、ちづるたちも知らない。
ただ、彼らの狙いが、封じられたオロチの力にあるのだということは明確だった。
我が主にオロチの力を満たす──。
“三種の神器”の前に姿を現した“遥けし彼の地より出づる者”のひとり、無界なる男は、はっきりとそういったのである。
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“來自遙遠彼岸之人”──他們如此稱呼自己的。雖然外貌型態與人類極為相似,卻是與人類完全不同的異種族。而他們所謂的“彼之地”到底是指何處,神樂他們也毫無頭緒。
不過,他們的目標是被封印的大蛇之力這點則是明確的。
“獻上大蛇之力給我的主人──。”
在"三種神器"前現身的"來自遙遠彼岸之人"中的一人,叫做無界的男子曾明白地如此說道。
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からりと、グラスの中で氷が鳴った。
うんざりするような蝉の声はいつの間にか絶え、あたりには居心地の悪い沈黙の帳が落ちている。
瀟洒な庭を見つめたまま、紅丸は口を開いた。
「──なあ、ちづるさん。今、オロチの封印はどうなってるんだい?」
「残念ですが……わたしが力を奪われたために、オロチの封印は解かれてしまいました」
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玻璃杯中的冰塊喀喇作響。
擾人的蟬嗚聲幾時已停歇、一時間四周陷入令人難受的沈默。
瀟灑地環顧庭院的同時、紅丸開口說道。
「──那個、千鶴小姐。如今、大蛇的封印變成怎樣了呢?」
「很遺憾…因為我的力量被奪去的緣故、大蛇的封印已經被解開了。」
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ちづるは淡々と答えたが、紅丸が一瞥した彼女の眉間には、忸怩たる思いをしめすシワがかすかに刻まれていた。
「封印を解かれたオロチが、どこかでよみがえった……ってことは、ありえるのかな?」
「それはないでしょう。以前、わたしの姉がゲーニッツに殺され、やはり封印が破られたことがありましたが、オロチの復活までにはさらに数年の時を要しました。まして、わたしたちが再度封印したオロチは完全な復活を遂げたわけではなく、逆に草薙や八神との戦いでかなり弱っていたはずです」
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千鶴淡淡的答道,而紅丸也注意到她煩惱的同時輕輕皺起了眉頭。
「封印已解開的大蛇,會否已在哪裡覺醒了呢…或者說、能夠辦得到嗎?」
「應該不可能吧。以前在我姐姐被傑尼茲殺害時,當時封印就已經被破解了,然而這之後到大蛇的復活也花費了數年的時間。而且當時被我們再次封印的大蛇,也沒有達到完全的復活;反而在與草薙及八神一戰之後應該是變得相當虛弱了。」
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「ってことは、そのオロチがもう一度実体を得て復活するには、それなりに長い時間がかかるってわけか」
「おそらくそうなると思います。……ですが、封印から解放されたオロチが、今どこにいるのかまでは、わたしにも判りません。あるいはすでにオロチの力は、あの無界という男がいっていたように、彼らの主とやらにそそぎ込まれてしまったのかも──」
「ちづるさんにもそのへんのことは判らないのかい?」
「……面目ありません」
黒髪を押さえ、ちづるはふかぶかと頭を下げた。
「“八咫の鏡”の力を失った今のわたしには、オロチの気配を察することすらできないのです」
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「也就是說、那個大蛇想再一次以實體復活,還得要花費很長一段時間囉?」
「我想是這樣吧。……然而、從封印中解放出來的大蛇,
如今到底身在何處、我也無法得知了。也有可能大蛇之力已如那個叫無界的男子所言,落入他們的主人手中也說不定──」
「千鶴小姐也無法得知他們那邊的情形嗎?」
「……很慚愧。」
撫著長髮、千鶴深深地低下頭。
「如今失去了“八咫之鏡”力量的我,甚至連大蛇的氣息也無法察覺了。」
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「別にちづるさんが謝ることじゃないさ。悪いのはあの小僧なんだから」
ちづるを罠におとしいれたのは“遥けし彼の地より出づる者”たちだが、彼女の力を実際に奪っていったのは、アッシュ・クリムゾンだった。以来、ちづるの神器としての力──オロチの封印を“護る者”としての力は、奪われたままになっている。
ちづるはゆっくりと団扇を揺らしながら呟いた。
「アッシュ・クリムゾン……彼はいったい何者なのでしょう?」
「そいつは俺も気になってるんだ。……あいつ、例の長ったらしい名前の連中とはたがいに知り合いらしいんだが、どういう関係なのかがどうにも判らなくてね」
過去に2度、紅丸はKOFを通じてアッシュと会っている。
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「千鶴小姐沒有什麼好道歉的。錯都是那個小子造成的。」
雖然讓千鶴落入圈套的是“來自遙遠彼岸之人”,不過奪走她力量的、卻是Ash Crimson。將神樂一直以來的神器力量──作為守護者用來封印大蛇的力量給奪去了。
「Ash Crimson…他到底是何方神聖?」
千鶴緩緩地搖著團扇嘆息。
「我也很在意那傢伙。…那傢伙、似乎和我一個名字很長的夥伴認識,不過他們之間到底是什麼關係就完全不清楚了。」
紅丸過去,曾兩度在拳皇大賽中遇上Ash。
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ひと言でいえば、得体の知れないそばかすの小僧、というところだろう。京や庵のものとは違う緑色の炎をあやつるあの少年が、いったい何を考え、何のために行動しているのか、紅丸にはもちろんのこと、旧知の仲であるはずのデュオロンすら何も知らないという。
縁台を離れてふたたび池のほとりに立った紅丸は、静かな水面に映る自分の姿を見つめ、いっこうにまとまりそうにない考えをあれこれとひねくり回した。
「アッシュとあの連中……仲間なのかと思えば本気でやり合ったり、といって古くからの敵同士という感じでもないしな」
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一言以蔽之的話,該怎麼說呢、那個臉上有雀斑的奇怪小子。擁有與京和庵不同的綠色火焰,那個少年到底在想些什麼、為了什麼而行動,紅丸只能確定,就連曾經是他夥伴的墮瓏也什麼都不知道。
離開長椅再次站到池邊的紅丸,望著池中自己的倒影,同時開始認真地反覆思考起來。
「Ash和我那個夥伴之間…要說彼此其實是同伴,又或者說是以前的敵人同志,感覺也不像那麼回事呢。」
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「共闘関係にあったものを、あの少年のほうが裏切った──とは考えられませんか?」
「さてね。……ただ、俺が組んだエリザベートってレディは、アッシュのことを同じ使命を持つ同志だといっていたぜ。裏切ったってことでいえば、むしろ彼女のほうがアッシュに裏切られた口だよ。アッシュの野郎、そんな使命なんか忘れたってほざいてたからな」
前回のKOFでは、紅丸はデュオロンとともに、エリザベート・ブラントルシュをリーダーとするチームで参戦した。
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「若認為是共闘關係的話、可以假設那個少年背叛了吧?」
「接著呢…與我組隊的那位叫伊莉沙白小姐確實曾經說過,Ash與她是肩負著相同使命的同志。若真的是背叛的話,應該是那位小姐被Ash背叛了吧,因為她曾出口痛罵Ash將他的使命給拋到腦後過。」
在前回的拳皇大賽中,紅丸與墮瓏、領隊伊莉莎白.布蘭特爾休,共同組隊參賽。
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エリザベート自身は、参戦の目的やアッシュとの関係など、肝心なことについては黙したまま口を開こうとしなかったが、少なくとも紅丸が見るかぎりでは、エリザベートとアッシュはかなり親しい仲にあるようだった。
長い金髪をかき上げ、紅丸は大袈裟に溜息をついた。
「たぶんエリザベートは、アッシュが何者なのか、何をしようとしているのか、そのすべてを知ってるはずだ。……だが、俺がいくら尋ねても教えちゃくれなかった。たぶん、この先も完全にノーコメントだろうな」
「そのかたの立場も判るような気がします。……おそらく、かつてのわたしと似たようなものなのでしょう」
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伊莉莎白自始至終都對自己參賽的目的以及和Ash之間的關係等重要的事絕口不提,不過紅丸也能多少感覺到,伊莉莎白與Ash之間感覺似乎就像很親近的夥伴。
將頭髮往上梳、紅丸大大地嘆了口氣。
「大概伊莉莎白對於Ash是何許人也、想要做什麼的都一清二楚吧。……然而不論我怎麼追問她就是不肯告訴我。大概現在去問她也只會回答無可奉告吧。」
「我似乎能夠體會那位小姐的立場。…恐怕、就跟以前的我一樣吧。」
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「きみと似た立場……?」
「ええ。“遥けし彼の地より出づる者”……彼らをオロチ一族に比するなら、それを宿敵とみなすエリザベート・ブラントルシュはまさしくわたしの立場。とすれば、アッシュ・クリムゾンは──」
「さしずめ、“三種の神器”の輪からはずれた八神庵、かい?」
ちづるを振り返り、紅丸は目を細めた。
「かもしれません。エリザベート・ブラントルシュと“遥けし彼の地より出づる者”が敵対している間で、アッシュはその双方と通じながら、どちらの仲間ともいいきれないポジションにいるように見えます」
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「跟你一樣…?」
「是的。“來自遙遠彼岸之人”……若將他們比做大蛇一族的話,那麼將其視為宿敵的伊莉莎白.布蘭特爾休就是我了。這樣說起來,Ash Crimson就是──」
「也就是,脫離“三種神器”宿命的八神庵、嗎?」
千鶴回過頭來,紅丸則瞇起了眼睛。
「很有可能。伊莉莎白.布蘭特爾休與“來自遙遠彼岸之人”之間是敵對關係,而Ash與兩造都有往來,難以斷言是哪一邊夥伴的關係上來說如出一轍。」
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「いずれにしても、アッシュの本当の狙いが何なのか、本人を締め上げて吐かせるしかないみたいだな。ついでというわけじゃないが、きみの力も取り返さないと」
「ですが、それも当人の居場所が判らないかぎりは……」
「じきに判るさ」
そう断言した紅丸の耳には、最後に出会った時のアッシュ・クリムゾンの言葉が今もはっきりとこびりついている。
「あいつは、八神の持つ“八尺瓊の勾玉”の力を奪って逃げる時に、こういったんだぜ。──次は京の番だってな」
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「不管怎樣,想了解到底Ash真正的目的是什麼,似乎只剩將他逮住、強迫他說出來了吶。而且不論如何,也得要將妳的力量取回來才行。」
「話雖如此,就連人在哪裡都不知道的話……」
「很快就會知道了。」
紅丸斷言道。最後碰見時,Ash Crimson講的話仍言猶在耳。
「那傢夥,在奪走八神擁有的“八尺瓊勾玉”的力量逃走時說了。──下一個就輪到京了。」
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すでにアッシュは、ちづるの持つ“八咫の鏡”に引き続き、先だっての大会において、八神庵の“八尺瓊の勾玉”の力まで手にしていた。これまで2度にわたってオロチを鎮めてきた三種の神器は、いまや草薙京が持つ“草薙の剣”しか、その正当な継承者の手に残されていないことになる。
そしてアッシュは、その最後のひとつすら、いずれ手に入れるとうそぶいているのである。
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Ash在取得了千鶴所擁有的“八咫之鏡”之後,接著又在上次的大會中,得到了八神庵的"八尺瓊勾玉"的力量。這麼一來用來鎮住大蛇的三件神器已入手其二,如今只剩下“草薙之劍”的正統繼承人─草薙京了。
而且Ash似似乎很有自信能得到最後的一件神器。
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血の気の薄い唇を噛み締め、ちづるは呟いた。
「たとえオロチの力がいまだに彼らの手に渡っていなかったとしても、もし草薙の“力”までがアッシュの手に渡ってしまえば、オロチをふたたび封印することはできなくなります」
「そうはさせないさ」
紅丸の白い革のパンツのポケットで、携帯電話が震え出した。
「これまでのやり口を考えれば、アッシュが真正面から京とやり合うことはないだろう。何らかのどさくさにまぎれて──たぶん、次もKOFの舞台を選んで仕掛けてくると思うよ」
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輕咬著沒有血色的下唇,千鶴嘆了口氣。
「假設現在大蛇之力還未落入他們的手中,然而若是連草薙的力量也被Ash給奪去了的話,就沒有辦法再次封印大蛇了。」
「不會讓他得逞的。」
紅丸白色褲子口袋中的手機響了起來。
「以到目前為止的情形判斷、Ash應該不會與京正面交鋒吧。應該是會趁機偷襲才是──我想大概,會選在下一屈拳皇大賽時動手吧。」
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「では──?」
「ああ。どうして俺が日本に戻ってきたと思う? もちろん、目的のひとつはきみの顔を見るためだけどね」
ストラップをつまんで携帯電話を取り出し、おどけたようにぷらぷらと揺らしながら、紅丸はちづるにウインクした。
「──チームメイトとミーティングの時間だ。名残惜しいが、そろそろおいとまさせてもらうよ」
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「這樣的話──?」
「啊嗯。你認為我為什麼回到日本來呢?當然,與妳見面也是目的之一啦。」
拿出手機輕輕地晃了晃,紅丸向千鶴眨了眨眼。
「──是時候去見見我的隊友了。雖然有些遺憾,不過就請容許我先走一步吧。」
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冷たく乾いた河北の大地で生まれ育ったデュオロンにとって、江南の上海はあくまで異邦の地でしかなかったが、それでもここを訪れるたびに懐かしさに似た感情を覚えるのは、少なからずここで積み上げてきた過去があるからだろう。
デュオロンの知己は、この街が年々住みにくくなっている、とぼやいたことがある。
いまや世界経済の中心ともいうべき中国において、首都北京をしのぐ繁栄を見せる上海が、なぜ住みにくい街になりつつあるというのか──それはもしかすると、彼が日の当たらない場所でしか生きられない人種だからなのかもしれない。
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對在乾冷的河北之地出生的墮瓏而言,江南的上海完全是個異地,不過再次造訪此處卻有種令人懷念的感覺,或許是因為之前在這邊也經歷不少事情的緣故吧。
墮龍的知己曾嘟噥過就是在這裡過了好些年的苦日子。
在現今已成為世界經濟重心的中國,甚至比首都北京還來得更加繁榮的上海,為何還要待在生活條件較差的街上──或許是因為他是個只能在不見天日的地方生存的人吧。
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古い街並みが壊され、代わって天を摩するような美しいビルが次々に建設されていく中で、社会の日陰者たちは、その生き方を少しずつ変えていく。腕力にうったえることしか知らなかった黒社会の男たちも、この街では、もっとスマートなやり方を学んで生きていかざるをえない。
だが、彼は違う。
時代がどんなに変わろうと、街の風景がどんなに変わろうと、彼は自分が変わることを受け入れない。
だから、真新しい上海が住みにくいと感じるのだろう。
不器用なその男の名を、シェン・ウーという。
デュオロンはその男に会うために、上海へと戻ってきた。
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廢棄的古老街道被櫛比鄰次的摩天大樓給取代,城市中的黑暗勢力們的生存之道也跟著改變了。只懂得倚靠蠻力的黑社會們,在這城市中也不得不學會更聰明的做法。
不過,他不一樣。
不管時代如何變遷、街道景致如何改變,他還是不願意改變自己。
正因為如此、才會感覺自己在這個新生的上海很難討生活吧。
這個不懂得變通的男子,名叫神武。
墮瓏正是為了要和他見面,才回到上海來的。
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前回のKOFの直後、シェン・ウーは、チームメイトたちとともに唐突にその行方が判らなくなった。
一部では死亡説まで流れたが、もとよりデュオロンはそれを信じていなかった。シェンがそう簡単に死ぬような男ではないと知っていたからである。
その考えが正しかったことは、上海に着いてすぐに証明された。
「……どこにいても目立つ男だ」
シェン・ウーの健在ぶりを見下ろし、デュオロンは冷ややかに微笑んだ。
開け放たれた高窓の、窓枠のところに腰を降ろしたデュオロンの眼下では、
ほんの10分前の祝賀ムードから一転して、阿鼻叫喚の修羅場が繰り広げられていた。
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在上屆的拳皇大賽之後,神武和他們的隊友們一起突然地消失了。
雖然有謠言說他們已經死了,不過墮瓏並不相信。他知道神武不是會這樣簡單就死去的男子。
這推論是否正確,只要到了上海就能夠印證了。
「…真是個不管到哪兒都很醒目的傢夥啊。」
確認神武仍然健在的墮瓏冷冷地微笑著。墮瓏從打開的高窗俯身往下望,樓下在十分鐘前原本還是一片歡欣喜樂的祝賀氣氛,轉眼間就化作了阿鼻叫喚的修羅場。
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そもそもこのレストランのホールでは、ここのオーナーでもある新安清会の会長──いわゆるチャイニーズマフィアのボスの、還暦を祝うパーティーが開かれていた。列席者の大半は、当然、組織の構成員たちである。
そのホールに、巨大なダンプで壁をぶち抜いて突っ込んできたシェンは、驚きに動きの止まった男たちに嬉々として襲いかかった。KOFの場でも、こんな派手なパフォーマンスはまず見られないだろう。
ダンプに跳ね飛ばされ、あるいは乱闘でひっくり返されたのか、白いクロスのかかったテーブルはことごとく倒れ、そこに並べられていた酒や料理はすべて床の上にぶちまけられていた。
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在這家餐館中的,是這家店的所有人,新安清會的會長──中國黑社會的老大,為了慶祝其六十大壽所辦的筳席。當然,與會者泰半是組織中人。
大廳上,駕著巨大傾倒車破牆而入的神武,愉快地襲向受到驚嚇而動彈不得的男子們。即使在拳皇大賽上、這樣華麗的表演也是前所未聞吧。
飛沙走石、在你來我往的亂鬥中,鋪著白色桌巾的桌子橫七八豎的倒著,原本排列整齊的酒與料理如今也灑了一地。
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何ともいえない匂いを放つそのぬかるみの中に、ボスの誕生日を祝うために集っていた黒社会の男たちが、次々に殴り倒され、突っ伏していく。数の上では圧倒的に有利であるはずの男たちが、シェンひとりの暴力の前に、なすすべなく屈服しようとしていた。
同士討ちを恐れているのか、男たちが銃を持ち出すことはなかったが、たとえ彼らが銃を使ったとしても、ダンプの突入から最後の男が昏倒するまでのタイムが少し遅れるくらいの差しかなかっただろう。それほどまでに、シェンの戦闘力は圧倒的だった。
シェンのファイトスタイルには、たとえば武術という言葉から連想されるような流麗さなどかけらもない。デュオロンのように、音もなく敵の背後に忍び寄って一撃するようなひそやかさもない。荒々しく手足を振り回し、罵声をまき散らしながら、触れるものを片っ端からなぎ倒していくその戦い方は、まさしくケンカと呼ぶにふさわしかった。
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在散發出陣陣異味的一片狼藉中,前來祝賀老大壽筳的黑社會男子們,一個個被揍得爬不起身來。男子們雖然在數量上有著壓倒性的優勢,在神武的暴力之下卻顯得顯得不堪一擊。
也許是害怕誤傷同伴吧,男子們始終沒有掏出槍來、若他們在牆壁被打穿時就拔出槍來的話,應該能稍微延長最後一名男子被打倒的時間吧。即使如此,神武的戰鬥力還是具有壓倒性的優勢。
神武的戰鬥方式,不是那種一般提到武術時就會聯想到的行雲流水。好比墮瓏,悄無聲息地從敵人背後接近,一擊就讓對方失去意義。神武則是誇張地揮動手腳、一邊咒罵著一邊將碰得到的東西都打飛的戰法,或許說是在幹架還比較合適。
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その締めくくりに、逃げ遅れて腰を抜かしていた小太りのボスが、容赦のない鉄拳を食らってすべての歯を砕かれたところで、デュオロンは惨劇の巷に軽やかに降り立った。
「──ふぅ」
拳についた血を振り払い、ずいぶんと静かになったホールを見回していたシェンは、ダンプのかたわらに立っていたデュオロンに気づいてこともなげに手を振った。
「よう」
「……また派手にやったものだな」
「ナメたことをしてくれた相手にゃ、それ相応のペナルティを食らわしてやらねェとな」
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在來不及逃跑的微胖老大吃了一記無情鐵拳齒牙碎裂的同時,墮瓏翩翩地縱身躍入大廳之中。
「──呼。」
甩掉沾在手上的血跡、環視已變得安靜的大廳的神武,若無其事地朝站在傾倒車邊的墮瓏揮了揮手。
「唷。」
「……還是搞得這麼誇張吶。」
「像這種小看我的對手吶,就得要讓他們嚐嚐相對應的教訓啊。」
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シェンがにんまりと唇を吊り上げると、その隙間から、よく発達した犬歯が覗いた。
デュオロンはシェンの足元に血まみれになって倒れている老人を一瞥し、いまさらのように尋ねた。
「この連中がおまえに何かしたのか?」
「殺し屋なんざ雇って俺をブッ殺そうとしやがったんだよ」
そういいながら、シェンは腕や首に巻かれていた包帯をわずらわしげに引きむしっている。包帯の下の傷はほとんどふさがりかけていたが、察するに、それがシェンのいう、殺し屋とやらとの戦いでついた傷なのだろう。
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神武滿足地咧嘴笑著、其中可見其發達的犬齒。墮瓏瞥了一眼神武腳邊渾身是血的老人,這才開口問道。
「這一班人對你做了什麼?」
「雇了殺手想把我幹掉啊。」
說話的同時,神武不耐煩地將手腕與頭上包裏著的繃帶給扯掉。繃帶下的傷已好了大半、留神細看,應該就是神武與殺手間一戰時所受的傷吧。
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こうしてシェンが生き延びている以上、その依頼は不首尾に終わったようだが、だからといって自分を害そうとした相手をそのまま見逃すほど、シェンは甘い男ではない。
遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくるのを聞いたシェンは、肩をすくめてデュオロンにいった。
「──ま、詳しい話は後回しだ。面倒なことにならねェうちに、ギャラリーの少ねえ裏口から退場するぜ」
「これだけのことをされても警察に泣きつけんとは、マフィアというのは難儀な商売だな」
「ヘッ、違いねェ」
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既然神武活了下來,那個暗殺的委託看來是以失敗告終了,而神武也不是那種會放過想加害自己的好好先生。
聽見遠方傳來的警笛聲,神武聳了聳肩對墮瓏說道。
「──總之、有事待會再聊吧。我可不想惹禍上身,從走廊後門開溜吧。」
「發生這麼點事就去找警察哭訴的話,黑社會的面子也掛不住吧。」
「嘿、說得沒錯。」
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乗ってきたダンプを放置したまま、シェンはかぼそいこえで呻く男たちを大股で跨ぎ越して歩いていく。半死半生の体をさらす黒社会の住人たちを見て嘆息し、デュオロンもまたそれにしたがった。
「──ところでデュオロンよ」
薄汚れた暗い裏路地を歩きながら、シェンがデュオロンに尋ねる。
「何だ?」
「おまえ、アッシュの居場所を知らねぇか?」
こちらから尋ねようと思っていた疑問を先に持ち出され、デュオロンは苦笑せざるをえなかった。
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把開來的傾倒車就這麼丟著、神武抬起腳大步跨過躺在地上不斷呻吟的男子們。墮瓏看著那群被揍得半死的黑社會男子們,嘆了口氣,也跟了出去。在髒污不堪的巷弄中奔走的同時,神武對墮瓏問道。
「──話說回來墮瓏啊。」
「──怎麼?」
「你知道Ash人在哪裡嗎?」
本來要尋問的事卻被反問,墮瓏不禁苦笑起來。
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「何だよ、おい? 何がおかしい?」
「いや……おまえも知らないのか」
「は? おまえもってのはどういう意味だよ?」
「俺がおまえを捜していたのは、おまえならアッシュの行方を知っているかもしれないと考えたからなんだが」
「チッ……」
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「幹嘛啊、喂?有什麼好奇怪的嗎?」
「沒有…連你也不清楚嗎。」
「哈?什麼意思啊?」
「我找你的理由、就是想說或許你會知道Ash的行蹤啊。」
「啐…」
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デュオロンの言葉に、シェンは眉をひそめて舌打ちした。シェンの怒気を感じて驚いたのか、残飯をあさっていた野良猫たちが、慌ててその場から逃げていく。
コートの襟を立て、デュオロンは横目にシェンを見つめた。
「……いったいアッシュと何があった?」
「まあ、いろいろとな。……思い出すのもムカつくが、ありていにいやぁ、俺をハメてくれやがったんだよ、アッシュくんはな」
ふたりの足は、いつしか通い慣れた運河沿いの酒家へと向かっていた。大きく西に傾いた茜色の陽射しが、人気のない倉庫街に、ふたりの影を長く引き伸ばして描き出している。
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聽到墮瓏的回答,神武皺起眉頭抿著嘴。感受到神武的怒氣,原本正吃著殘羹剩菜的野貓們驚慌地逃走了。
豎起大衣的領子,墮瓏橫眼凝視著神武。
「到底你跟Ash之間發生了什麼?」
「啊啊、發生過很多事啦,光是回想起來就覺得很火大,講白點,我被他陷害了,被Ash那傢伙。」
不覺間,兩人開始朝著時常光顧的運河旁的酒家走去。日落西下的紅色夕陽、在已沒落的倉庫街上映照出兩人長長的影子。
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シェンはうっすらと傷の残る頬をかき、デュオロンに尋ねた。
「……で、おまえはどうしてアッシュを捜してんだ?」
「正確にいえば、俺が捜しているわけではない。──エリザベートという女を覚えているか?」
「ああ、おまえのチームメイトだったおカタい女か?」
「彼女がアッシュを捜している」
「何でまた?」
「詳しい事情は俺も聞いていない。……が、どうやら例の妙な連中に絡んだ話らしい」
「へえ」
相槌を打ったシェンの顔に、獰猛な獣を思わせる笑みが浮いた。シェンがこういう表情を見せるのは、たいてい、そこに楽しそうな闘争の臭いを嗅ぎつけた時と決まっている。
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神武按著臉頰上的小傷痕,向墮瓏尋問道。
「…所以,你是為什麼要找Ash?」
「正確來講,我並沒有要找他。──你還記得那個叫伊莉莎白的女人嗎?」
「啊啊,與你同隊的那個頑固女人嗎?」
「那女的正在找Ash。」
「這又是為何?」
「詳細的情形我也不清楚。……不過好歹也是之前微妙同伴的請託呢。」
「嘿。」
答腔的神武臉上,浮現如野獸般的猙獰笑臉。神武會露出這樣的表情,通常都是當他嗅到所喜愛的、鬥爭特有的異味時。
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「……実をいえば、アッシュが何をしようとしているのか、俺もまんざら興味がないわけではない」
「そうか? 俺は興味ねェな」
「だろうな」
シェンが興味があるのは、強い相手と思う存分戦うことだけだろう。ある意味、とても判りやすい男だった。
「……アッシュを追いかけていれば、おのずとそういう相手が出てくることになるだろうが」
「たとえ出てこなくてもよ、こっちはアッシュをこのままにしちゃおけねえんだよ。判るだろ、親しき仲にも礼儀ありってな? ──前みてェにいっしょになって陽気に騒ぐにゃ、テメエのやらかしたことに落とし前はつけてもらわねえとよ」
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「……說實在話,對於Ash到底想要做什麼,我也不是全然沒有興趣。」
「是嗎? 我倒是一點興趣也沒有吶。」
「看來是如此呢。」
神武所感興趣的,是與強大的對手盡情地拼個你死我活。從某方面來講,是個明白易懂的傢夥。
「…若繼續去追Ash的話,相信就能遇到我想要的對手了吧。」
「就算沒能遇上,我也可以跟Ash好好算算之前的舊帳。你能了解的吧,無論是多要好的夥伴也得懂禮儀啊? ──之前跟他在一起時就已經快捺耐不住了,只是每次要做個了斷時都被你阻止罷了。」
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「そういうものか」
「そういうもんだよ」
「具体的には?」
「1発思いっ切りブン殴る」
シェンの拳が唸りをあげて空を打った。
「……ま、あいつは俺の舎弟みてェなモンだからな。俺をハメた件についちゃあ、それでチャラにしてやるぜ」
不敵に笑いながら、シェンはデュオロンの肩に手を回し、馴染みの酒家に入った。
シェンはいうまでもなく、デュオロンのほうも、あの哀れなマフィアたちのことなどすでに忘れていた。あれだけ派手にやらかしたケンカも、シェンにとっては、ごく当たり前の、日常のひとコマにしかすぎないのである。
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「是這麼回事嗎?」
「就是這麼一回事。」
「具體的作法呢?」
「狠狠地揍他一拳。」
神武握起拳頭朝空中揮舞。
「…嘛、因為那傢夥感覺就像我弟弟一般啊。耍弄我的帳,這樣就算結清了吧。」
無懼地笑著的同時,神武把手搭在墮瓏的肩上,走進熟悉的酒家。
即使神武沒說,墮瓏也知道他早已把剛剛那群可憐黑社會們的事給忘得一乾二淨了。就算是那樣誇張地大鬧一番,對神武來說,也不過就稀鬆平常的日常瑣事罷了。
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─To Be Continued─
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